1 人工衛星はどこを飛んでいる

 良く晴れた日、旅客機が飛行機雲を残しながら、1万メートル以上の上空を飛んでいるのを見ることが出来ますが、人工衛星もそのように見る(目視)することが出来れば、そこが飛んでいるところです。一般の人工衛星より、はるかに大きな飛行体ではありますが、国際宇宙ステーション(ISS)は目視することが可能です。また、現在は飛んでいませんが、スペースシャトルも見ることが出来ました。
 アマチュア衛星のジャンルに「Cube Sat」と言うのがあります。これは一辺10㎝の直方体で、重さ1㎏を基本とした衛星で「サイコロ衛星」とも言われています。宇宙空間を飛翔するこのような小さな人工衛星は目視することが出 来ません。ではどのように飛んでいるところを確認したら良いでしょう。
 人工衛星は、秒速約7㎞で宇宙空間を飛んでいますが、その軌道は真円でなく少し歪んだ楕円なのが普通です。地球をどのように回っているかを含めたものが軌道要素となりますが、その軌道要素を現したものが「TLE」(Two Line Element)です。見慣れないと「TEL」Telephoneと間違います。この軌道要素はNORADやNASAがレーダー観測して軌道要素を割り出し、その結果を公表しています。軍事衛星などは原則として公表されていません。


【軌道要素「TLE」の例】


CAS-4A
1 42761U 17034D 17170.15963280 -.00000219 +00000-0 +00000-0 0 9998
2 42761 043.0200 275.6489 0008395 353.7174 075.3427 15.08967665000592

 この軌道要素を元にして、衛星の飛んでいるところを表示させるソフトウェアが数多くあります。日本の代表的なものは「CALSAT32」で多くのアマチュア局が使っています。一般的に「トラッキングソフト」と呼ばれていいるものです。このソフトの作者JR1HUO相田さんのホームページからダウンロードし、パソコンにインストールして使います。相田さんのHPには使い方が懇切丁寧に書かれていますので、難しいことはありません。

【CALSAT32】



2 アマチュア衛星の仕組み
  
アマチュア衛星を衛星通信に使う場合には、中継器(Transponder)を搭載していることが前提になります。もちろん中継器を積まず、地球や宇宙空間の観測を目的とし、得た情報をTelemetryとして地上に送ってくる衛星もあります。宇宙から地球を撮影しその画像を送ってくる衛星もあります。
 中継器に対して地上から衛星に向けて電波を送ることを「アップリンク」と言います。そして、周波数を変えて、衛星から地上に向けて電波を送ることを「ダウンリンク」と言います。これとは別に、衛星のID(Callsign)や衛星の状態を送信する「ビーコン(Beacon)」があります。中継器の周波数とは別になっている場合が通常です。

3 使う周波数は
 
アマチュア無線の衛星ですから、アマチュアバンドを使うことになります。29MHz、145MHz 430MHz 1200MHz 2.4GHz 5.6GHz 10GHz これらの周波数帯が使われます。ポピュラーな使い方はV/UないしU/Vです。すなわち、145MHz帯でアップリンクし、430MHz帯でダウンリンクないしは 430MHz帯でアップリンクし、145MHz帯でダウンリンクの形が多いということなります。
 使う周波数は、上記のバンドのどこでも良い訳ではなく、IARU(国際電気通信連合)で衛星通信に使う周波数が決められています。この決められた範囲内で各衛星で使う個別の周波数が「調整委員会」で決定される仕組みになっています。

4 どのように衛星を追ったら良いか
 まず、アマチュア衛星からの信号を捉えてみましょう。アンテナを衛星が来る方向に向けます。指向性のある八木アンテナで手持ちの場合、145MHz帯で3エレメント、430MHz帯で8エレメント位のアンテナで衛星からの信号を捉えることが出来るでしょう。ダウン信号がFMモードの衛星は少ないのですが、SO-50という衛星が中心周波数436.795MHzで信号を下していますので、ハンディ機のFMモードで聞くことが出来ます。ドップラーがあり衛星が見え始めた時は上に約5kHzずれて聞こえてくるはずです。ただし、地上局がアップリンクした時しか聞こえてこないので、見つけずらいかも知れません。衛星がどこから上って来て、どの方向へ沈むかはCALSAT32で計算させ、PC上に表示されたものをメモして外に出てアンテナを向け、リグの周波数を合わせてダウン信号を探すことになります。

5 パソコンは必要か
 パソコンは必要です。前述のように「衛星がどこを飛んでいるか」を見るのに衛星追尾ソフトを使いますが、これはパソコンで動かすものなので、パソコンが必要ということになります。衛星追尾ソフト「CALSAT32」の場合は、衛星の送受信周波数を設定し、その周波数によりリグ(送受信機)をコントロール出来るほか、方位・仰角のアンテナローテーターもコントロール出来るようになっています。

6 交信はどのようにしたら良いか
 CubeSatでありながら、FMモードで衛星通信が出来る「AO-85(Fox-1A)」の場合で説明しましょう。衛星追尾ソフトはCALSAT32とします。
 CALSAT32のフォルダーの中には多くのファイルがありますが、まずその中の一つELEM.TXTにAO-85のTLEを設定します(TLEの在りかについては↓衛星通信ポイント集で説明しています)
 次に「SATINFO.TXT」に衛星の情報を書き込みます。Beacon周波数、アップ周波数、ダウン周波数となります。メモも書き込むことが出来ます。
 さらに、衛星グループは、1グループ6つの衛星を設定出来ます。任意のグループにAO-85を置きます。
 CALSAT32を立上げ、衛星の飛来を待つまでの間、リグON、アンテナローテータースイッチONしておきます。衛星が飛来したらアンテナコントロールを自動にして追尾開始します。リグコントロールはコントロール画面の「CON」「CAT」「SAT」~「FREQ」~「NOR」「DOP」と順に押します。これでリグの周波数に自動でドップラーが掛かり衛星からの信号が受信出来る状態となります。
 マイクに向かって「CQサテライト、こちらはCallsignどうぞ」自分のダウン信号が聞こえればOKです。






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月別衛星概況 2018
月ごとの衛星関係トピックスを掲載しています。

衛星通信

アマチュア衛星通信を紹介するページです。

  JE1CVL Kuge Fumio

アマチュア衛星通信とは、アマチュア無線の周波数を使って、人工衛星を経由して通信をすることです。

1 人工衛星はどこを飛んでいる
2 アマチュア衛星の仕組み
3 使う周波数は
4 どのように衛星追ったら良いか
5 パソコンは必要か
6 交信はどのようにしたら良いか

日本のアマチュア衛星「FO-29」

 人類初の人工衛星は、1957年(昭和32年)ソ連のスプートニク1号でした。アマチュア無線用の人工衛星はアメリカが先行し、1961年(昭和36年)12月12日にオスカー1号が打ち上げられています。
 人類初の人工衛星から4年後のことですから、商用にひけをとることなくアマチュア衛星も開発が進められて来たことになります。
 日本のアマチュア衛星は、1986年(昭和61年)8月13日にJAS-1の打ち上げが成功しています。
 今元気に飛んでいるJAS-2(FO-29:ふじオスカー29)は、1996年(平成8年)8月17日に打ち上げられました。21年経過しようとしています。
打ち上げから21年にもなろうとする日本の衛星が今も元気に飛んでいるのは素晴らしいことです。FO-29は「日本珠玉(しゅぎょく)の衛星」と言えます。
                         (19.Jun.2017記述)

どのように、人工衛星を使って通信をするのでしょうか。

人工衛星の歴史

最初に人工衛星の歴史を簡単に…